駄作映画 THE FIRST SLAM DUNK
映画、THE FIRST SLAM DUNKが2022年12月3日に公開された。
私も初日に見に行った。
世間では声優の交代やCG描写でヒットするか危ぶまれた。
だが、23日間の興行成績で、観客動員数340万人、興行収入50億円を突破など、好調な滑り出しをしている。
リアル知人や、インフルエンサーからも好評である。
ここで私は気づいた。
私の思いを素直に述べれば、ポディションを取れるのではないかと。
断っておくと、世間の流行り物に一々逆張りして叩くものは大嫌いだ。
素直に世間で売れる物は楽しもうというスタンスの方が人生楽しいだろうになんでそんなにひねくれるのかな。
そして、他人が楽しんでいる者にケチをつけるのも嫌いだ。
面白がっている人が面白がっているからそれでいいじゃん。
そして、今回私がすることは、もろにケチをつけることだ。
思想信条に反する気もする。
だが、Slam Dunkの映画について感想を黙るのもはちょっと違うと思う。
連載していたころからずっと好きだった。
コミックスを全巻買い、漫画ばかり読むなと親から捨てられて、少したってから完全版を全巻買った。
その完全版を東日本大震災でなくしたら、再度、単行本を全巻購入した。
思い入れがありまくる作品なのだ。
そんな作品が、26年振りにアニメ化される。
当然、期待して、公開初日に前情報をカットして見に行った。
そんな思い入れのある作品を見に行って、自分が納得いかないものを見た。
だが、興行収入や周りの評価が高い。
私が好きなインフルエンサーも褒めている。
だから、自分の不満は言わない。
しかし、そんなんでいいのか。
いいたいことも言えない、そんな世の中をセルフ作成してよいのか。
いや、ダメだ。
言いたいことをいいまくろう。
大いにポディションを取ることにしたのだ。
中田敦彦、マコなり社長、かかってこいや!!
駄作なもんは、駄作なんじゃ!!
ということで、ここまでグダグダと言い訳を述べたが、私の感想を語っていきたいと思う。
なんで、宮城リョータを主人公にしたの?
一言でいえば、これで終わりだ。
私は、Slam Dunkの中で、主人公の桜木花道が一番好きなキャラだ。
THE FIRST SLAM DUNKが好きで、ここまでムッとして読んだ方も、「桜木ファンならたしかに不満だよね~」で納得して、ブラウザバックするかもしれない。
だが、待ってほしい。
私が言いたいことは、桜木ファンから見て、推しの活躍が減って残念ということを言いたいのではない。
そもそも、Slam Dunkというのは、作者が作品として、桜木花道が主人公であるということを大事にしていると感じていた。
単行本の表紙は、常に桜木花道が描かれている。
他のキャラが活躍する巻でもひっそりと端っこに桜木を描いているのだ。
念のために、軽く解説すると、Slam Dunkは高校バスケを舞台にした作品だ。
桜木は高校からバスケを初めた。
湘北高校バスケ部のレギュラーの中で、一番ヘタだ。
だが、桜木は、日常的な基礎練習を行って少しずつうまくなっていく。
さらに彼には、高い身体能力に闘志と不屈のメンタルがある。
一番ヘタながらも、基礎練習の成果と不屈のメンタルで活躍し、仲間に影響を与え、敵からも認められる。
そして、桜木は、人間として、バスマットマンとして成長していく。
これがSlam Dunkという作品のコアだと思っている。
試合で桜木よりも活躍するキャラはいくらでもいる。
湘北高校ならキャプテンの赤木や、桜木のライバルでエースの流川などがそうだ。
彼らが桜木より活躍しなかった試合など一度もない。
しかし、試合のターニングポイントやチームにとって絶望的な場面では、桜木がキラリと光る活躍をする。
牧を吹っ飛ばして決めたダンクや、仙道から最高のパスを貰った魚住のシュートをブロックしたことなどが顕著だ。
繰り返すが、チームの中で一番ヘタな桜木が、努力と才能とメンタルで、キーポイントで活躍するというのがSlam Dunkという作品の大事な部分だ。
しかし、今回は、宮城リョータが主人公だ。
宮城リョータは、湘北で一人だけ、全試合でフル出場しているキャラクターだ。
当然、桜木よりもうまい。
もうこの段階で、Slam Dunkではなくなった。
30年ぶりに作られたテニスの王子様の映画でいきなりタカさんが主人公になったり、ぼっち・ざ・ろっく2期の主人公が山田になったようなものだ。
タカさんや山田が好きな人でも違和感を抱く人は多いだろう。
桜木を主人公から外したことが致命的だ。
それにしても、桜木以外から主人公を選ぶにしてもなんで宮城なんだろうと思った。
ライバルの流川や、キャプテンの赤木なら活躍する描写が多くある。
だが、宮城はスタメン5人の中で一番活躍の描写が少なかった人物だ。
スタメンどころか、人によってはベンチメンバーの小暮よりも描写が少ないという人がいるだろう。
ちなみに私もそう思う。
小暮が決勝トーナメントの陵南戦で3ポイントシュートを決めるシーンが、それまでの努力の回想とあいまって素晴らしすぎるのだ。
宮城の活躍描写が少なかったことが作者の心残りで、今回、主人公にしたのではないかと言われる。
私のリアル知り合いも何人もそういった。
私もそう思っている。
それに対して私はこう言いたい。
「そんなのを26年振りの映像化のアニメでやるなよ!!」
さらに言いたい。
「どうしてもやりたきゃ、事前に宮城が主人公と言えよ!!」
ちょっと番外編を描くなり、何本かアニメ短編を作る中の一作で宮城リョータ主人公をするのはまったく問題ない。
だが、今回は26年振りのアニメ化で、しかもそれが映画なのだ。
今まで活躍を描かなかったキャラの救済のような形で使われたら、作品の大ファンとしてはたまったものではない。
そして、何より主人公を変えるということを事前に告知しないのは、きわめて悪質だ。
映画では、原作の山王工業との戦いが描かれる。
山王工業は前年の優勝校で、山王戦は原作きっての名試合と名高い。
原作で描かれた最後のゲームだ。
山王戦は、湘北メンバーが全員活躍するが、やはり活躍のウェイトは主人公の桜木が多い。
圧倒的な山王の力の前に、メンバーが絶望にうちひしがれる中、桜木は来賓の机に土足でよじ登り、「ヤマオーは俺が倒す」と会場中に叫ぶ。
(多分、こんなことをリアルでしたら一発退場だろう)
そこで自身に活を入れ、仲間たちに勝つしかなくなったと鼓舞する。
試合展開としては、湘北メンバーそれぞれの活躍で追い上げていき、試合の終盤でついに逆転した。
だが、山王の底力によって、最終盤で再逆転を許してしまう。
もはや時間はほとんどない。
流川が決死の思いでボールを運び、シュートしようとする。
だが、山王のディフェンスの前に、完全にブロックされる体勢となった。
その瞬間、桜木がフリーになっていることを見た流川は、とっさに桜木にパスをする。
桜木が地道に練習して得たジャンプシュートを時間ギリギリで決めて、湘北高校が勝つ。
それまで嫌いあっていた桜木と流川が、タッチを交わして幕を閉じる。
その試合展開は、映画でもまったくいじっていない。
むしろ、忠実に再現している。
結果、桜木の活躍描写が多いのに、宮城視点での描き方で、要所で宮城の回想が入るという、なんともチグハグな作品になってしまった。
素直に桜木を主人公にすれば、回想で、ジャンプシュートの練習シーンや、流川とのそれまでの確執を入れることができる。
そうすることで、最終版の行為に重みを持たせることができた。
なんとも残念である。
ちなみに、ここまでボロクソにいってきたが、映像自体は素晴らしい。
モノローグなどを極力入れずに、映画の時間の流れを現実と近くさせている。
実際にバスケの試合を見ているようなリアルさを感じた。
特に漫画を何度みてもいまいちわからなかった山王のゾーンプレスについて、「なるほど、こういう動きか」と納得した。
前評判で叩かれたCGもまったく気にならなかった。
むしろリアルな動きを見ているようで良かった。
非常にクオリティの高い映像になっている。
声優変更もまったく気にならなかった。
不満点は宮城リョータを主人公にしたことだけである。
しかし、それがあまりにも致命的すぎた。